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岡山地方裁判所 昭和35年(ワ)344号 判決 1961年10月23日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、

被告は原告に対し金四五万二、八〇〇円およびうち金二〇万円に対する昭和三一年一一月二九日から、金一九万八、六〇〇円に対する昭和三二年一月八日から、金五万四、二〇〇円に対する昭和三二年一月一六日から各完済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は原告の負担とする。との判決ならびに担保を条件とする仮執行の宣言を求め、

その請求の原因として

一、被告は

(イ)  昭和三一年九月二八日訴外有限会社大倉鉄工所(現在の商号有限会社大倉工業所)に対し額面金二〇万円、満期昭和三一年一一月二九日、振出地支払地とも岡山市、支払場所株式会社三和相互銀行

(ロ)  昭和三一年一一月一日同訴外会社に対し額面金一九万八、六〇〇円、満期昭和三二年一月八日、振出地支払地支払場所とも(イ)に同じ

(ハ)  昭和三一年一一月二日訴外広田板金工作所こと広田美男に対し額面金五万四、二〇〇円、満期昭和三二年一月一五日、振出地支払地支払場所とも(イ)(ロ)と同じ

なる三通の本件約束手形を振出し、訴外有限会社大倉鉄工所は昭和三一年一一月二九日本件(イ)の手形を、昭和三二年一月八日本件(ロ)の手形を原告に各裏書し、訴外広田美男は昭和三二年一月一六日本件(ハ)の手形を訴外吉川照男に、同訴外人は同日これを原告に裏書し、原告は現に本件各手形の所持人である。

二、本件(イ)(ロ)の手形はそれぞれ満期に、本件(ハ)の手形はその満期の翌日である昭和三三年一月一六日に各支払場所において支払のため呈示されたがいずれも支払を拒絶された。

三、しかして本件(イ)(ロ)の手形は被告が訴外有限会社大倉鉄工所に対し、また本件(ハ)の手形は被告が訴外広田美男に対し負担する各工事請負代金債務の支払のため振出されたものであるが、いずれも満期後三年以上を経過し原告の被告に対する本件各手形債権の消滅時効が完成した結果、被告は本件各手形金と同額の右各工事請負代金債務を免れる利益を得ることとなつた。

四、してみると本件各手形の所持人である原告は手形法第八五条の規定に基づき本件各手形の振出人である被告に対し被告が本件各手形債権の消滅時効完成によつて得た右利益の償還を請求する権利があるから、原告は被告に対し本件各手形金と同額の右利得金合計および本件各手形金相当額に対するそれぞれ本件各手形の支払呈示の日の翌日から完済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求めるため、本訴に及ぶ。

旨陳述し、

被告の信託法違反の抗弁を否認し、原告は本件各手形金相当額の対価を支払つて本件各手形の裏書を受けたものであるから、被告の右抗弁は理由がない旨附陳した。

立証(省略)

被告訴訟代理人は、

主文同旨の判決を求め

原告主張の請求原因中、原告が本件各手形の裏書を受けて現にその所持人であることおよび被告に手形法第八五条の利得があることを争い、その余の事実を認め、

抗弁として、仮りに原告が本件各手形の裏書を受けて現にその所持人であるとしても、原告に対する各裏書はいずれも支払拒絶後の裏書であつて手形金取立訴訟を主目的とする信託行為であるから信託法に違反し無効である旨主張した。

立証(省略)

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